コラム(R4.8)

平和実現に必要な世界連邦

まずは、ロシアとウクライナの戦闘によって亡くなられた方々のご冥福を心よりお祈り申し上げます。

 国連人権高等弁務官事務所の発表によると6月22日までに、ウクライナで少なくとも4、662人の市民が死亡したとのことです。また、800万人以上のウクライナ人が国外に避難し、700万人以上が国内で避難民として生活を送っているそうです。

 ウクライナの人口が4、159万人ですから、国民の36%以上が家を追われ、家族が離れ離れとなって路頭に迷っていることになります。また、ロシア軍とウクライナ軍の兵士の死者数は、2万人ともいわれています。
 国際連合安全保障理事会(国連安保理)はロシアの軍事侵攻の翌2月25日に「ロシアを非難する決議案」を採択しました。
 15理事国のうち11カ国が賛成しましたが、常任理事国のロシアが拒否権を行使し、決議案は否決されました。当然、自国の行動を非難する決議案に賛成票を投じるわけがありません。
 安保理に参加できるのは全加盟国193カ国中の15カ国で、米国、英国、ロシア、フランス、中国の「常任理事国」5カ国を除いた10カ国は、任期2年で交代する非常任理事国です。
 この安保理の決議には全加盟国に法的拘束力があり、国際社会で問題を起こしている国に経済制裁や武力行使を行うことができますが、拒否権を持つ常任理事国が1カ国でも反対すれば、残り14カ国が賛成しても決議案は否決されます。
 2月25日の安保理決議を否決された国連は、3月2日と24日に総会を開き「ロシアを非難し即時撤退を求める決議案」と「ウクライナの人道危機を『ロシアの敵対行為の結果』として即時完全無条件撤退を求める決議」をそれぞれ141カ国と140カ国の賛成(ロシアなど5カ国が反対)で採決しましたが、残念ながら安保理決議と違い、法的拘束力がなく、ロシアが決議に従う義務はありません。
 安保理は軍事侵攻から72日目の5月6日、ウクライナの「平和と安全の維持に関して深い懸念」を表明する議長声明を全会一致で採択しました。議長声明は、安保理の公式文書で、決議に次いで重みがありますが、やはり法的拘束力はありません。
 ロシアに対する世界の意思が明確に示されているのにもかかわらず、国連では軍事紛争を止めることができないのです。
 加盟国の中には国連の改革を主張する声も多く、来年から非常任理事国となる日本も安保理改革に積極的に取り組みたいとしています。しかし、国連改革には国連憲章の改正が必要なため、全ての常任理事国の同意が必要です。特権を持つ5つの常任理事国が、自らの権限を弱めるような改革に積極的に賛成することはまずありません。
 やはり、国連に代わる新たな世界の枠組みを構築していく必要があります。それが、人類愛善会が取り組んでいる世界連邦運動なのです。
 無秩序な国際社会を、秩序ある法治社会にするには、人類全体を共通の法治体制の下に置き、すべての国々の独立は保ちながら 〝地球〟という一つの連邦国家を築く。世界平和を実現するには、世界連邦という枠組みがどうしても必要です。

(人類愛善会「平和」部会)